「子育て」をきっかけにアドラー心理学に興味をもった方のために、アドラー心理学を子育てに取り入れる上で重要なポイントについて解説していきたいと思います。早速はじめましょう!
温情主義
嫌われる勇気の共著者のひとりでアドラー心理学会認定カウンセラー・顧問の「岸見一郎」(きしみ・いちろう)先生がアドラー心理学を学ぶきっかけとなったのは子育てだったそうです。
私がアドラー心理学を学び始めたのは息子がまだ二歳のときでした。その後、娘も生まれ、子どもたちとのかかわりの中でいろいろなことを学んできました。子どもたちが大きくなった今振り返ってアドラー心理学を学べてよかったと思います。子どもとの接し方が大きく変わることになったからです。
【引用:アドラー心理学入門】
しかし同時に、アドラー心理学を子育てに取り入れることのムズカシさについても指摘している点は、見過ごしてはいけないと思います。
かねてよりアドラーは、誤解されやすい思想家でした。特にその「勇気づけ」というアプローチは、子育てや学校教育、また企業などの人材育成の現場において、「他者を支配し、操作する」というアドラーの本意からもっともかけ離れた意図を持って紹介され、悪用ともいえる扱われ方をされる事例が後を絶ちませんでした。
【引用:幸せになる勇気】
ここで重要なポイントは「他者を支配し、操作する」という点です。あなたがアドラー心理学を子育ての参考にしようとするとき、無意識に「自分が望むような子どもに育てる手段」として、アドラー心理学を位置づけていないでしょうか?
もし子どもを自分が望んでいるように育てようとするなら、それはアドラー心理学の悪用であり、ハッキリ言ってしまえばパターナリズムです。パターナリズムは、日本語では「家父長主義」「父権主義」「温情主義」などと訳されます。
パターナリズムとは、一般的には「強い立場にある者が弱い立場にある者の利益になるという理由で、本人の意志に反して行動に介入・干渉すること」という意味です。ひらたくいえば「お前はまだ未熟で正しい判断ができないので、わたしが正しい方向へと導いてあげよう」という態度で他者と接するのが、パターナリズムです。
ようするに「子どもを躾(しつ)けるノウハウ」として、アドラー心理学をとらえてはいけないのです。事実、子どもをほめてはいけないし、罰を与えてもいけない、というのがアドラー心理学の立場です。
ここまで聞いたあなたは驚いているかもしれません。「子どもをほめてもいけないし、罰を与えてもいけないのであれば、一体、これから子育てをするわたしはどんなことに注意すればよいのだろうか?」と疑問に思ったのではないでしょうか?
果たして・・・アドラー心理学を子育てに取り入れるとは、一体、どういうことを意味しているのでしょうか?
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